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ラウル・デ・カイザー

1930年ベルギー、デインゼ生まれ。2012年同地で没。「画家の中の画家」と呼ばれ、具象と抽象の境界を越える本質的な絵画で知られる。美術批評とスポーツ記者の仕事を経て、1963〜64年にデインゼの美術アカデミーでロジャー・ラヴェールに学ぶ。1960年代には、フランドルでラヴェールが中心となった動向「Nieuwe Visie(新しい視覚)」に参加し、この潮流は国際ポップ・アートに隣接していた。1970年代からは油彩が制作の中核となり、その後も継続する。各期で表現は変化を見せるが、デ・カイザーは身近なものや空間の観察から出発し、直観に導かれて形と色を単純化・抽象化し、モチーフを反復して検証する姿勢を貫いた。イメージを成立させる最小の要素(線・面・色面、余白)の探究と、幾何学に回収されない柔らかな筆致とが併存し、生まれた像は鑑賞者の心象へ静かに開かれていく。

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